築100年のマンション

祖母の家は農家をしている。
木造瓦屋根の大きな一軒家と作業場、庭の奥に広がる畑とその脇にある竹林。最近家の近くにコンビニやら駅やらができたらしく、地価が上がって大変らしい。私がよく行っていた頃は坂の下の自動販売機が唯一の売店だったのに。
祖父がまだ生きていたときは、孫のためだけに苺の苗を植えて、専用の苺畑を作ってくれたりもした。初めて飼ったペットのハムスターも庭に眠っている。
今は、年末年始くらいしか行かなくなってしまった。

母は、よく「この家は昔茅葺きだったの、トイレも汲み取りだったんだから」と私に話した。
ずいぶん丈夫な家だ。補強もしているし、これから先も滅多なことがない限り倒れることはないだろう。築100年はいってるんじゃないか。
そこには家族の歴史があって、家はそれを見つめてきたわけだ。


私の実家はマンションなので、それと比べるとそこまではもたないだろうなと思う。

築30年の鉄筋マンション。マンションっていつまでちゃんと建ってるんだろうか。

父と母が結婚してそれからずっと住んでいるマンション。

私とほぼ同い年のマンション。

築100年のマンションって聞いたことないから私は年を取ったら実家がなくなるんだろう。誰もいない実家に私だけが取り残される図を想像する。

帰る場所がなくなってしまうな、
そんな遠い未来のことを考える前に、私は今就いている仕事のことと人生について考え直さないといけないのに。