ずっとそこにある

一緒にお昼を食べに行ったり、たまの休日に遊んだりもしていた別部署の人が休職した。

ちらちらと冗談めかして「いきなり会社行かなくなっちゃうかもなぁ」なんて言ってたことが現実になった。

家庭の事情だったらどうしようかといろいろな闇もしたけれど、耐えきれずラインで連絡を取ってみたら、案外けろりとしていて、会社に行けない以外は特になんの代わりもなく生活しているので気分転換に遊びにいこうと逆に誘われるかたちになった。

私の会社は毎年休職者がでる。
二度とこの会社と関わりをもちたくないという意思でやめていく人も少なくない。

久しぶりに会う彼女は、相変わらずの笑顔で待ち合わせに遅れた私を責めもせず迎えてくれた。

入社して三年足らずで同期は半分以下になった。
私が社交的じゃないせいもあってか、やめた同期のことは風の噂で聞く程度だ。
みんな、結婚したり他の会社で働いたり、それぞれ元気にやっているらしい。

会社で出会った人は、会社の枠から出てしまうと私の人生には登場しない。

私の知ってる人が私の知らないところで働いたり生き続けているということ。

鬱でやめた社員のFacebookが明るい話題で更新されていること。

連絡を取ろうと思えば画面の向こうに生きている元同期がいるということ。

その当たり前の事実がすごく不思議だなと思う。

私は、神様ではないから世界のすべてを把握することはできない。触れたことのある世界がどんな色や形に変わっていくのかを目でみたり耳で聞いたりしないと理解できないことがひどくもどかしい。

仕事は全くできないし、あの職場はやっぱりしんどいなぁなんて言うと、
「仕事なんてたくさんあるよ、あなたはまだ若いんだから」と彼女は笑う。

生きていく場面が変わるたびに故意的ではないけれど人間関係を切ってしまっていた。同時並行的に関係を継続することがどうしてもできない。そんな私でも、この縁は大切にしたいなと思った。


帰り際、また会おうねと手を振ってくれた彼女の後ろ姿を思い出す。