カレンダー

子供の頃、週末がこわかった。



週末は家族行事が絶対に入るからだ。
父は私をいろんなところに連れていってくれた。

遊園地、水族館、大きな公園。
釣りやキャンプ、プールまで。

下手すると関東近辺の子供が好む施設は全て行ききっているのではないかというくらいだ。



父はいつも私が喜ぶだろうと思い、
出かける準備をしていた。

そして、今週はゆっくりしたいという母を「お前は子供じゃなくて自分のことの方が大事なんだな」となじった。



私は、二人が喧嘩さえしなければどこにもいかなくてよかった。家でじっとしてても外に出ても本当になんでもよかった。



「俺の休みを無駄にするのか」
遠出をするには早起きや準備をしなければいけない。

寝坊や準備不足によって、
父の思い描くの休日を過ごせないとなると、そこからはわたしの最低な休みが幕を開ける。



腹いせのようにギャンブルに数万円を使って、母に向かって「お前のせいでこんな無駄な金を使わなくてはいけなくなった」と怒鳴る。

「俺が稼いだ金で生活してるのに、週末行きたいところにも行かせてくれないなんて嫌がらせなのか」と終わったことを何度も何度も何度も繰り返して母を徹底的に責める。



これは一つのゲームだと思った。
父の理想の休日を家族で作っていくゲーム。



少しでも嫌みや反抗をするものなら、父は外だろうがどこだろうが激昂しこうなったのは全部お前のせいだと母に向かって吐き捨てる。

母はどんどん自分の意見を言わなくなっていった。伝えたところでどうにもならないと諦めているからだ。



彼女をそうさせたのは、父にあなたは間違っていると言えなかったのは私なのに。



今でも休みの日にどちらも自分の予定を入れることが少し後ろめたい。

私が外に逃げている間、母は自分の休みを使って父の休みに付き合っているから。

カレンダーの赤い文字の羅列に心が重くなる。

自分の予定を後ろめたいきもちを持たずに入れられるようになる日は一生来ないように思う。