以後の話

私をおいて家族が車で出かけた天気の悪い日曜日。
もし、父の運転する車が悪天候で事故を起こして3人もろとも死んでしまったら、私は行きなり明日から天涯孤独になるんだなとひどい想像をよくしていた。

朝のニュースで見た衛星写真の台風は、私が見てもわかるくらいばかでかかったし、明後日にはもう東京は壊滅してしまうのかもしれない。

隕石が頭に当たって死ぬ想像は何百回もしたけど、それよりも台風で剥がれた人の家の屋根に首を持ってかれるほうがいくぶんリアルな気がした。

東京中の人がこの台風で死んでしまっても、私だけは生き残る気がしている。

結局、学生時代の日記もラインのトーク履歴もTwitterのアカウントも捨てられない半端な覚悟で自分の責任を負うことなく死にたいということ自体が浅はかなのだ。

本当は誰も死んでほしくないし、誰も不幸にならないとこしえの国でみんなで笑って遊んで暮らしたい。

この台風のせいで天涯孤独になる人も何処かにいるかもしれない。私たちはもうずっと以後の世界で暮らしているような気がしているけれど、あの大きな災害からまだ8年しか経っていないことに気づく。そして、あのとき確かに起きた出来事で天涯孤独になった人もきっといるんだろう。
今回の台風が誰かの人生の以後をつくるきっかけになることもあるかもしれない。そんなことを思いながらいつもより少し混んでいる電車に乗って家路についている。

いてもたってもいられなくなって、母親に気を付けるんだよと連絡をした。
私は結局祈ることしかできないし、神様は意地悪だ。
私が今、生きているのもたまたま運が良かっただけなのだろう。どこで踏み外すかもわからない以前と以後をいったりきたりして続いてく人生を思う。