いつも通り顔も心もぐちゃぐちゃのまま家路について、時間も気にせずに晩ごはんをかけこむ。
とりあえずお腹を満たしたところでスマホを取り出してタイムラインを確認する。
流れてくる言葉たちは相変わらずでそれでも画面の向こうに誰かの生活を感じて少し心が緩む。
スマホを見るでも、音楽を聴くでもなんでもいい。とりあえずなんでもいいから、自分の意思で選択したことをこなさないと気が狂ってしまいそうなのだ。

お風呂に入るのは諦めよう、今日はもう寝なくちゃ明日に耐えられない。と自分を納得させる。
時計は25時過ぎを指している。

毎日、お風呂か食事か睡眠か、どれかを諦めてでもせめて最低限文化的な生活をしなければと漫画雑誌やYouTubeに手を出して明日の自分の時間を前借りする。

タイムラインを流れていく言葉のなかで、顔ももう思い出せない大学の後輩が呟いていた「宝石の国アニメ化かぁ」の呟きに目が止まった。

宝石の国には勝手な因果がある。

大学2年の冬、どうしようもなく好きな友人とクリスマスに泊まった満喫で私が読んでいた漫画だから。

その日は彼氏彼女のいない友人同士で集まってあえてイルミネーションなどクリスマスらしさが全開のイベントを見に行くという馬鹿かな遊びをしていた。

楽しいままお開きになり他の友人達がぱらぱらと駅に向かっている途中、ぽろっと私の口からでた「楽しいがずっと続くといいのにね」という言葉に友人がのってきてくれたのだった。

ただ、日にちはクリスマスイブ、何件回っても飲み屋もカラオケも空いておらずお互い諦めて満喫に泊まることになった。

内心ひやひやしている私の気持ちなど気にもせず友人は浦安鉄筋家族を読みふけっていた。私もひたすら背中合わせで話もせずずっとずっと宝石の国を読んでいた。

ページをめくる音が途切れ、相手の寝息が聞こえてくると、もう気持ちがいっぱいになってしまって心のなかでごめんなさいと呟きながら癖っ毛の髪を二回撫でてしまった。

きっと、あなたにいつかできる彼女はこんなかたちじゃなくて撫でたいときにあなたの頭を撫でれるのだと思うとそれが本当に羨ましくて相手にばれないようにちょっとだけ泣いた。

吹いたら飛ぶようなペラペラの人生のなかにある一瞬の眩しさに生かされている。
余韻に浸るのはいつも現実味のない真夜中ばかりで朝が来ればまた元通りになるようにできている。