花にまみれて眠る。

布団カバーを買い換えた。
白地にピンクの花が散らばっているかわいいやつ。前のシーツは寝ている間に爪を引っ掻けてしまった箇所が徐々に裂けてしまってみっともないことになっていたので、ようやくといったところだった。
布欲が刺激されていたのか、別のお店でまたもや花柄の毛布を買う。その頃にはもう、「どちらも花柄だと部屋全体の雰囲気が変わるんじゃないか?もう春が来るから毛布はいらないんじゃない?」といったことは頭のすみに追いやられている。かわいいから欲しい、だから買う(値段は見ない)という圧倒的な物欲で脳がバグる。理性で押さえることがどうしてもできない。部屋にあるもののなかで一番気に入っているのは古着屋で買った花柄の抱き枕カバー。赤い生地の上にハルジオン大きな花束が描かれている。久しぶりにお店にいったら、店はつぶれていて、跡地はファミレスになっていた。

ベッドシーツもこれまた、裏地が赤のチェック、表は赤のチューリップという夢みたいな柄で、メルカリでたまたま見つけたのだけれど、すごく気に入っている。

偶然の出会いを運命と錯覚して生きているので、これだと思うとなりふり構わず家に迎えてしまう。

私の寝床は偶然にもお花にまみれになった。部屋の場所のなかで一番かわいい。

本物の花を部屋に飾ったことは一度もない。

夏の最中に生まれた母は、ひまわりが大好きで、夏になると誕生のお祝いにとひまわり畑を見に出掛けるのが家族の恒例になっていた。

冗談めかして、自分の棺桶は菊の花じゃなくてひまわりで一杯にしてくれなんて笑うのだった。たしかに母は太陽のような人だからひまわりをたむけるのはピッタリだとおもった。

私の棺桶にはなんの花が似合うんだろう。生の花は枯れてしまうから、折角ならこの寝具たちを詰めてもらえないだろうか。

枯れない花たちにくるまってスマホをいじっている。その間だけは全部から守られている気がしている。